はじめに
デモ、製品の推奨事項、展開に関するアドバイスを専門家にお問い合わせください。
過去には放送業界向けの高性能なストレージを利用していましたが、運用上、専門的な知識が必要でした。それに対して、Synology 製品は専門家でなくても比較的取り扱いが簡単です。特に、FS6400 は、今回の配信ニーズに適した性能を持ちながら、コストの面でも導入しやすかったので、採用を決めました。RAID の構築が迅速に行える点も大きな魅力でした
AT Linkage株式会社 代表取締役 福谷亮氏
課題
G7とは米国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本の西側諸国の主要7ヵ国が世界の経済、金融、気候変動など世界が抱える課題について議論する会合である。
G7広島サミットは、世界平和や、食料問題、エネルギー問題など世界をより良い方向に導くための決定事項を、全世界に向け発信するというミッションを議長国として、日本は威信をかけて完遂する必要があった。
そのためG7広島サミットでは高い品質でのライブ配信を提供する必要があった。配信では遅延によるコマ落ちが基本許されず、収録、編集、配信などの複数フェーズにそれぞれ細かい要件が設定されていた。
また大規模な国際会議では、開催直前/開催中にも進行プログラムや放映内容の変更が生じることが多い。そのため、事前準備の段階でシステムを仮構築し、開催直前に詳細が確定した後の数日間で本番に向けて機材のセットアップから最終調整を行う必要がある。
福谷氏「今回G7広島サミットのCCTV配信を担当するにあたり、いくつかのライブイベントが並行して実施されており、全てをライブでは上映できません。また、ライブで流されたイベント映像に対して編集をしてコンパクトにわかりやすく伝え直す必要もあります。そのため、追っかけ編集に対応できるワークフローを構築し、ライブそのままのディレイドでの放映や、迅速に編集をしての再放映のニーズに対応する必要がありました。」
高い品質のライブ配信を実現するため、AT Linkageは、高いパフォーマンスや信頼性を提供する配信サーバーを必要としていた。
ソリューション
Synology FS6400はパフォーマンス、信頼性、機能拡張に対応する柔軟性を提供する。
パフォーマンス面では特にデータの読み込み速度が非常に重要であった。広島サミットでは、収録しながらの再生と追っかけ編集をコアとして主要なワークフローが採用され、サーバー性能が非常に重要となった。特に追っかけ編集を行う現場では、安定した収録システムが第一要件となる。ファイルの操作中にデータの読み書き速度が低下すると、収録や再生が停止するリスクがあるが、どのような状況でも3日間72時間の間は、配信映像が途切れる事態は回避しなければならない。そのため、SSDで構成され、大幅にアクセススピードを向上できるオールフラッシュのFS6400にSSD24台を搭載し、RAIDF1を構築した構成は、最適な選択だった。10GbEでSMBを使用し、Synology SSDを24台搭載し、RAIDF1を使用した場合のスペックはRead:7058.77MB/s、Write:7058.24MB/sとなる。
また信頼性の観点では、Synology純正のSSDであるSAT5210-1920Gを使用することでストレージシステムを全てメーカー純正品で揃え、互換性の問題などのリスクを回避している。またメモリを64GBに増設することでハードウェアスペックを補強し、システムリソースの観点から余裕のある運用を実現した。
さらに今回のFS6400には会見映像で撮影された映像の書き込み作業、Mac5台での追っかけ編集、デジタルサイネージへのライブ配信、様々なデバイスがFS6400にアクセスする必要がある環境での運用となった。Synology NASはSMB、NFS、AFP、FTP、rsyncなどの様々なファイルプロトコルに対応しており、複数のサービスを利用する際のサーバーとしての利用が可能だ。
利点
実はAT Linkageは2016年に開催された伊勢志摩サミットでもSynology NASを使用している。AT LinkageのHPには伊勢志摩サミットで撮影された画像を公開しており、そこにも2ベイタイプのSynology NASが登場している。
サミットのような大規模な案件でのメインの配信サーバーとしての使用は今回が初めてとなった。Synology製品は全てのNASに統一のOSであるDSMが搭載されており、今回初めてFS6400という大型ラックモデルを導入したが、同じく分かりやすいUIで対応でき、操作方法を学びなおす必要がない。
「検証段階でライブ配信環境を構築するストレージとして、申し分ないパフォーマンスが発揮することが判明した後は、操作方法の勉強などに必要以上に時間を取られる必要がなく安心してG7広島のライブ配信に臨むことができた」と福谷氏は語る。
今回3日間72時間デジタルサイネージへのライブ配信を続けたFS6400は一度もコマ落ちすることなく、求められたパフォーマンスを発揮し、G7広島の成功に貢献した。
AT Linkage株式会社(以下AT Linkage)は、テレビ番組やインターネット動画配信の企画制作を主軸に、システム構築やプロジェクトマネージメントなど、多岐にわたるサービスを提供している。これまで大規模な屋外音楽イベントや国際会議の配信を成功させ、その都度、プロジェクトに最適なシステム構築を実現してきた。
その豊富な実績と経験が高く評価され、2023年5月19日から5月21日にかけて広島県で開催された先進国首脳会議(通称:G7 広島サミット、以下 広島サミット)で、国際メディアセンターの運営に携わることとなった。国際メディアセンターは、各国メディアの活動拠点となる施設で、放送設備が集約されている。広島サミットでは、メイン会場のホテルと離れた位置にある広島県立総合体育館に国際メディアセンターが設置され、国内外からの報道関係者約1万人がこの施設を利用した。
AT Linkageは、広島サミット会場内外のCCTV(閉回路テレビ)のシステム構築と運用を担当した。CCTVは、特定の施設内に構築されるテレビシステムを指す。サミットのような大規模な国際会議には、多数のメディアが世界各国から取材に訪れるが、会場スペースの制約からすべてのメディアが取材エリアに入ることは難しい。そのため、代表となるメディアが取材・撮影を行い、その映像はCCTVを通じて各国メディアに提供されるのだ。
サミット開催に向けてシステムの構築や機材選定が進められた舞台裏で、どのような課題や工夫が生まれたのか、AT Linkage代表取締役の福谷 亮氏(以下 福谷氏)に話を伺った。
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